2016年09月17日

発掘! 縄文土器一発!

発掘! 縄文土器一発!

黒髭土偶と一発型土器、および小型打製石器群。
通称「縄文土器一発」。又褄遺跡出土。
東北地方で発掘された、この謎めいた遺物についての報告である。

縄文土器一発!

黒髭土偶を一発型土器の上部に開いた穴に設置し、小型打製石器を土器側面に開いたスリット状の穴に挿入していくと、ひとつだけ土偶が飛び出る穴がある。

縄文土器一発!

用途の詳細は不明だが、出産を模したものであり、赤子が困難を乗り越えて健康に生まれてくることを祈願する儀式に使用されたとも言われている。

縄文土器一発

黒髭土偶はいわゆる遮光器土偶型、一発型土器は円筒上層式土器の流れを汲むものだと考えられ、共に縄文時代後期の作。
このような特殊な型式の土偶および土器、石器は他に出土例がないため、今後の発掘調査が待たれる。

縄文土器一発

と、いうようなイメージで作った。
※又褄(またつま)遺跡は実在しません

青森の遺跡をめぐる旅

先日、青森に旅行に行き、いくつかの遺跡を巡った。
以前、フェリシモさんの企画「妄想商品化道場」の投稿用として遮光器土偶型のポーチ「洒ポーチ土偶」を作った際に、Twitterでラーメンズの片桐仁さんに勧めていただいた、八戸の「是川縄文館」に行ってみたかったのだ。

是川縄文館

是川縄文館は、国宝の「合掌土偶」を初め、周辺の遺跡で出土した土偶や土器が大量に展示されている。

是川縄文館

またちょうど特設展「山の縄文世界」の最終日で、中部地方の土器や土偶が展示されていて、顔面把手付深鉢や水煙紋土器、子宝の女神とも呼ばれる円錐形土偶などを見られたのも収穫だった。

是川縄文館

常設展示ではいい顔の遮光器土偶がずらっと並ぶ。
赤い漆塗りの土器や、別室に控える国宝・合掌土偶など、見どころがたくさんあった。
写真撮影可なのも嬉しい(フラッシュは不可)。

合掌土偶

歴史の教科書でよく知られている、三内丸山遺跡にも行った。
三内丸山遺跡の出土品の目玉は重要文化財「板状土偶」。

板状土偶

想像していたより巨大で、迫力があった。黒っぽい色と形で魔王が磔になっているように見える。
こちらも写真撮影可(フラッシュ不可)。

三内丸山遺跡

他にも大量の土器や土偶、石器、編みかごなど、縄文人の文化レベルの意外な高さを感じられる。

三内丸山遺跡

また、広大な遺跡の中で、復元された建物(建物自体は推測で作られたもの)、遺構の一部を見学できる。ちょうどガイドさんが案内してくれるタイミングだったので、解説を聞きながら見学。

三内丸山遺跡

三内丸山遺跡は大きな集落で、広い道路が作られ、そこにそって墓場が並んでいたそうだ。栗の栽培、周辺との交易……などなど、今までなんとなく捉えていた縄文感がすこしクリアになった気がした。

縄文コスプレ
縄文コスプレもできたし。

もう一箇所、亀ヶ岡遺跡にも行きたかったのだが、ちょうど月曜日だったため定休日。
事前に調べてあったのだがすっかり忘れていた。
せっかくなので最寄りの木造駅へ。巨大な土偶の形をしていることで有名な駅だ。

木造駅

昔は目が光ったらしい。それはぜひ見たかった。

駅の売店には遮光器土偶「しゃこちゃん」グッズはほとんどなく、おばあちゃんが手作り品を売っているのが謎だが、遮光器土偶のオブジェ(小)¥900を購入。
その代わりに駅近くの「街の駅あるびょん」には遮光器土偶「しゃこちゃん」グッズが何種類か置いてある。タオルやせんべい、どら焼きなど。陳列がなんとなくバラバラで、推してるのか推してないのか微妙な気もするが、グッズがほしい場合はここに来ると良いだろう。

どら焼き

近くには「しゃこちゃん温泉」という温泉施設もある。
こちらは、多少のグッズ販売はあるものの、ほぼ名前だけで、中身は良い温泉だった。
のれんのデザインが、温泉に入る遮光器土偶なのがかわいい。

温泉

他にもスヌーピーっぽい滝(田子町のみろくの滝)を見たり、

みろくの滝

神樹ぽいブナの木を見たり、

ぶな

青森魚菜センターでのっけ丼を食べたりと充実した青森旅行だった。

のっけ丼

縄文時代の黒ひげ危機一発を作る

そんな青森旅行を経て作ったのが、冒頭の「縄文土器一発(黒髭土偶・一発型土器)」。

縄文土器一発

これは、2016年9月16日にお台場の東京カルチャーカルチャーで開催された、ラーメンズ・片桐仁さんと妄想工作家・乙幡啓子さんのイベント「また、つまらぬ物を作ってしまった vol.4」に向けて製作したもの。

ベースはもちろん「黒ひげ危機一発」。
黒ひげの海賊が入った樽に剣を刺していき、黒ひげを飛び出させたほうが勝ち(あるいは負け)という、知らない人はいないであろうタカラトミーのゲームだ。
どうなるかわかっていても、剣を刺すときにドキドキするから不思議なものだ。

黒ひげ危機一発

まずは黒ひげを土偶にする。
服のシールをはがし、目鼻やかぶっているバンダナの出っ張っている部分は削り取ってしまう。
ちょっと怖い。

黒ひげ顔はがし

そこに粘土を盛って土偶にしていく。
モデルはしゃこちゃんこと遮光器土偶。

土偶未塗装

胴体は、遮光器土偶の胴体の模様を簡略化して平面にし、プリントアウトしたものを貼り付けた。

黒髭土偶

樽は出っ張りを削り溝を埋めて、上部を広げるように粘土を盛り、土器の形を作る。
その上に、粘土の紐で装飾をつけていく。

土器装飾

三内丸山遺跡で見た土器を参考にしつつ、あまりとらわれないように、縄文人になった気持ちで。
下半分の縄目の模様は実際にタコ糸でつけている。

土器

剣も打製石器に改造。
不要な部分を切り落とし、柄に粘土を盛って木目をつける。
刃の部分は打製石器らしい打ち欠きをカッターでつけた。

打製石器原型

これを原型とし、型取り用のシリコンで型を作り、着色したレジンキャスト(2種類の液を混合すると固まる樹脂)で複製。
元と同じく、青、赤、緑、黃の4色に。石なので色は少し暗めにした。
着色したレジン液は放置すると発泡することがあるなどの問題はあったが、いいものができた。

打製石器

こうして完成したのが「縄文土器一発(黒髭土偶・一発型土器)」である。

縄文土器一発

もちろんちゃんと遊べるし、いつ土偶が飛び出るかというドキドキ感……いや土器土器感がある。
土器だけにね。

飛び出る様子をムービーでもどうぞ
土偶にした分ちょっと重いので飛び方は元の黒ひげほどではないが、衝撃はある。

また、つまらぬ物を作ってしまった vol.4

4回目となる「またつま」イベント。
毎回工作のお題が出て、出演者・参加者が作品を発表する。
今回のお題は「ご当地」部門と、お題なしの自由部門。

またつま

「ご当地」のお題が発表された際、すでに青森行きが決定していたのでちょうど良かった。
土偶や土器をモチーフに何か作ろう。何か動きのあるものがいい……と考えていたところで、思いついたのが黒ひげ危機一発の改造だった。

黒ひげ危機一発の改造は、デイリーポータルZで乙幡さんもやっていたので、工作の通過儀礼みたいなものだ。多分。

当日はこの他に「上野大仏クカバー」も持参し、壇上で発表。
冒頭の設定もすこし話す。
片桐さんは縄文に詳しく「ちゃんと青森の土器になってる」とわかっていただけたのでさすがである。打製石器も打製石器らしいと褒めていただけた。

乙幡さんには「松本さん、もう嫌い」と言われた。彼女か。
盛り上がっていただけて何よりである。

その上、お題「ご当地」部門で片桐賞をいただいた。
実際に青森まで行き、青森の土器をモチーフに作ったところを評価していただけたようだ。
やったー!

またつま枡
賞品は、またつま枡。

「また、つまらぬ物を作ってしまった」イベントは1回目から欠かさず参加している(1回目2回目3回目)が、毎回他の参加者の作品に驚かされるし、刺激になる。
それに、締め切りがあってそれに向けて作品のアイデアを練り、素材をそろえてクオリティを上げていく作業は、大変だがとても楽しい。
今後も「またつま」イベントがずっと続いていくと嬉しい。元々NOTTVの番組のイベントで、NOTTVはなくなってしまったけれど。

告知:「109の土偶展」に出展します

今回作成した「縄文土器一発(黒髭土偶・一発型土器)」は、2016年10月8日〜10月16日に阿佐ヶ谷で開催される、土偶がテーマの展示会「109の土偶展」に出展いたします。
他に「洒ポーチ土偶」など既存の作品や、これから作る土偶もいくつか出展しますので、よろしければ是非ご来場ください。
在廊日・時間等はTwitter等でお知らせいたします。
109の土偶展

三内丸山T

「またつま」イベントには三内丸山遺跡のTシャツで臨みました。