2017年11月05日
あの人に会いたくて御所野遺跡(前編)
藤岡みなみさんというタレントがいる。
最初に知ったのは昔、おもしろサイトデイリーポータルZでやっていた読者による記事投稿コーナー「デイリー道場」。当時彼女は大学生で、すでにタレント活動をしていた。
掲載されていたのは、高円寺のインドカレー屋を巡って高円寺が日本のインドかどうか確かめる、というブログ記事。どうやら高円寺在住らしい(当時)。
当時おれも高円寺に住んでいて、しかもどうやら大学の後輩(学科も違うし通学期間も被ってないけど)。親近感を勝手に覚えた。しかもめちゃくちゃ可愛いし。
そんな藤岡みなみさん、最近では縄文に興味をお持ちだという。
縄文がテーマの番組に出演したり、縄文時代がテーマのフリーマガジン「縄文ZINE」では表紙を飾ったり記事に出てきたり、縄文土器を自作したりと、縄文活動も熱心にされている。
縄文好きのおじさんたちをそわそわさせる存在なのだ。結婚を発表されたときは縄文おじさんたちをざわざわさせていた。
藤岡さんが表紙の「縄文ZINE」。めちゃくちゃ可愛い。
おれも近年縄文にはまり、縄文工作家などと名乗ることもある身。いつかそのつながりでお会い出来ないかとぼんやり考えていた。だってめちゃくちゃ可愛いから。
そんなある日のことだ。
「御所野で謎解きゲームをやることになったので手伝ってくれませんか?」
突然「縄文ZINE」の編集長・望月さんから言われ、きちんと理解せずに「分かりました」と答えた。
で、御所野(ごしょの)ってどこだろうか。
望月さんとおれ
「縄文ZINE」編集長の望月さんは、元々は友人であるライター・ネルソン水嶋君の紹介で知り合った。彼がデイリーポータルZの記事で、新潟にある笹山縄文の里のツネルペさんに取材したのがきっかけで「縄文ZINE」の存在を知り、彼が東京に来た際に「縄文ZINE」編集部に挨拶に行くというのに誘われてついていったのだ。その頃おれは縄文工作を初めたばかりだった。
それ以来、望月さんにはゆるぢえさんの「縄文ハック」の記事に出てもらったり、「縄文ZINE」の梱包のお手伝いに行ったり、「縄文ZINE」で記事を書かせてもらったりと、何かとお世話になっている。
「縄文ZINE」編集長望月さん。
その望月さんから、御所野縄文公園で開催されるイベントで、縄文謎解きゲームをすることになったので手伝ってほしい、という依頼があった。よくわからないが面白そうだ。引き受けるほかないだろう。
御所野縄文公園こと御所野遺跡は岩手県にある縄文時代の遺跡だということはだいぶあとになってから知った。
大久保の韓国料理屋で「縄文ZINE」望月さんとミーティング。おれのほかに縄文のポータルサイト「どぐぽた」の小林さんも参加。望月さんに御所野縄文公園で開催される「ごしょの縄文フェス」の詳細を聞かせてもらうと、なんと藤岡みなみさん出るって。
藤岡みなみさんは、「ごしょの縄文フェス」の企画のひとつのトークショーに出演されることに決まっているのだが、「縄文ZINE」プロデュースの謎解きゲームの方にも出ていただけるという。
あのめちゃくちゃ可愛い藤岡みなみさんが。
と、いうことはだ。
藤岡みなみさんの出る謎解きゲームに協力するということは、関係者としてあのめちゃくちゃ可愛い藤岡みなみさんにお会い出来るってそういうことっすよね。
それ、おれも当日行っていいっすか!
望月さん、小林さんとのブレストを経て、藤岡みなみさんには探偵役として謎解きゲームに出演していただくという方向に。
いくつかのアイデアと謎を考えて提供し、当日も会場に行ってお手伝いすることになった。
御所野遺跡とは
御所野遺跡は岩手県二戸郡一戸町にある縄文時代の大規模な集落跡で、博物館が併設されており、現在も調査・研究が続けられつつも、遺跡のかなりの部分を御所野縄文公園として一般に公開している。
御所野縄文公園の入り口には、「きききのつりはし」という長い木製の吊橋がかかっているのだが、これが現実世界と縄文世界との境目のように感じがしてなんとも奇妙。そして吊橋なので結構揺れる。
きききのつりはし。長い。
吊橋を抜けると御所野縄文博物館。御所野縄文博物館は2014年にリニューアルされておりかなり新しい印象。ビジュアル的にもわかりやすい解説で縄文時代の生活をリアルに感じる。
縄文時代を体感できるプロジェクションマッピングもあり、知識だけでなく感覚で縄文時代を捉えることができる。
縄文時代の四季を表現したプロジェクションマッピング。
御所野縄文博物館の目玉は「鼻曲がり土面」。その名の通り鼻が曲がった土面で、祭祀に使われたとされているが用途ははっきりわかっていない。鼻が曲がっている理由も謎だが、鼻が曲がっている土面は他にもあるので何らかの意味があったと考えられている。
今回、御所野縄文公園に行くにあたってこの「鼻曲がり土面」をモチーフにしたiPhoneケースを作っていった。なぜiPhoneケースを作ったのか、と聞かれても、衝動に突き動かされて、としか言えない。
なおこのiPhoneケースは藤岡みなみさんにも褒めてもらえた。しかも素材が気になったらしく「触ってもいいですか」と言って触ったので、現在このiPhoneケースは「藤岡みなみさんが触ったiPhoneケース」として家に飾ってある。
ちなみに素材は、アクリルのiPhoneケースの上に樹脂の粘土を盛り、アクリル絵の具で塗装し、防水ニスとスプレーで耐水加工したものだ。
ついでに「鼻曲がり土面」のブローチも作った。こちらはオーブンで焼く陶土で出来ている。せっかく作ったので量産してイベントなどで販売している(11/18の「東京縄文ビレッジ」でも販売します)。
御所野博物館には「鼻曲がり土面」のほかにも通称「羽つき縄文人」人体紋付土器片や土偶、土器、石器などたくさんの遺物が展示されており、見ごたえがある。
特に気になったのはこの縄文土器。形も模様も素晴らしい。家にひとつほしい。
博物館の脇を抜けると公園がある。かなり広い敷地で、芝生がきれいに手入れされている。この地面の下にはたくさんの住居跡があるそうだが、そのうちいくつかが復元されている。
御所野縄文公園の復元された竪穴式住居の一番の特徴は土葺きであることだ。
竪穴式住居は地面を掘り下げてその中に柱を立て、木で枠組みを作って屋根をかぶせた住居で、見つかるのは掘り下げた穴と柱の跡、炉の跡などで、上にどんな建物が建っていたかは推測するしかない。そのため復元住居では茅葺きが多いのだが、ここでは土葺きの痕跡が実際に発見されているので、復元住居も土葺き。今までに復元された竪穴式住居をいくつか見たことがあるがすべて茅葺きだったため、土葺きの竪穴式住居は新鮮に感じられた。
新鮮だがなにかしっくり来る。なんとなく縄文時代と茅葺きの住居が合わない気がしていたのだ。竪穴式住居をイメージした傘を作ったこともある身ではあるが、今後は竪穴式住居といえば土屋根住居をイメージすることにしよう。
さらに、屋根にかぶせる土の量も、竪穴式住居を建てる前に掘り下げた穴の土の量を測って決めているらしい。計算上それだけでは足りないので屋根のてっぺんは栗の木の皮で葺いてある。
理論と検証実験に基づいて復元されているというのがとても興味深かった。
この公園に植えてある植物も、当時も生えていたであろう植物がほとんどであるという。公園の地面も当時とほぼ同じ高さだというので、縄文人が見ていた景色とほぼ同じものを見ているのかもしれない、そんな想像を掻き立てられて楽しい。
同行者がボランティアでガイドをやっているという中学生の女の子にガイドをお願いしていて、その子がとても熱心なのもよかった。御所野遺跡、愛されているな。
この博物館と公園で開催される地域イベントが「ごしょの縄文フェス」。
謎解きゲームはその中の企画のひとつである。
藤岡みなみさん登場
イベント前日、朝の新幹線に乗って二戸駅へ。
「縄文ZINE」望月さんと、御所野遺跡のスタッフさんと合流。
昼食後、いよいよ藤岡みなみさんのお出迎え。
あらかじめ言っておくと、タレントさんなのでこの記事に藤岡さんの当日の写真はほとんどない。みなさん想像してください。
知ってはいたがめちゃくちゃ可愛い。
どれくらい可愛いかというと、地球とそっくりだけど可愛い生き物しか住んでいない星から何らかの役割があってやって来た人、という感じ。逆にわかりにくいな。派手な感じではなく、日常に溶け込んでいるのに格段に可愛いのだ。
各自、ふわっとしているのに知性を感じる、しかもめちゃくちゃ可愛い人が駅の改札を抜けて歩いてくるところを想像してください。マネージャーさんと一緒に。
当然話しかけるなんてとても無理。こっちは勝手に来た縄文おじさんだし。
黙ってみんなの後をついていった。
御所野縄文公園
岩手県二戸郡一戸町岩舘字御所野2