2016年10月31日

阿佐ヶ谷に土偶ブームがやってきた日

阿佐ヶ谷に土偶ブームがやってきた日

土偶。縄文時代に作られた、呪術的な目的で使用されたといわれる粘土製の人形。
埴輪と混同されがちだが、埴輪は古墳時代に権力者の墓の副葬品として作られたものを指すので、見た目も時代も用途も異なる。

土偶
こちらは青森の是川縄文館で見た遮光器土偶。遮光器土偶は主に東北で作られていた形式。

他にもさまざまな形の土偶が日本全国で発見されている。

その土偶をモチーフにした作品の展示会に誘われ、参加することになった。
しかも計109体分の土偶作品を展示するというのだ。

きっかけは「洒ポーチ土偶」

フェリシモの企画「妄想商品化道場」に投稿するために、土偶モチーフのポーチ「洒ポーチ土偶」という作品を作った
妄想商品化道場は、Web投票で期間中に1位になると商品化されるという企画。
1位には届かなかったものの、たくさんの投票をいただき、TwitterやFacebookでも多数シェアされた。

洒ポーチ土偶

これを見た友人のネルソン氏(ベトナム在住)が、デイリーポータルZで新潟県十日町市の縄文土器についての記事を書いたつながりで、ベトナムから日本に一時帰国する際に、縄文時代がテーマのフリーマガジン「縄文ZINE」の編集長に会いに行くのに誘われ、同行させてもらった。

縄文ZINE
縄文ZINE、フリーなのに内容が濃く、面白いので見つけたら是非手にとってみてほしい。

そして、「縄文ZINE」編集長望月さんの紹介で、今回の展示会「109の土偶展」に参加することになったのである。

何体の土偶を出そうか

タイミング的に2016年9月の「また、つまらぬ物を作ってしまった」イベントの少し先だったので、それに向けた新作(縄文土器一発)と、洒ポーチ土偶、さらに1作品くらいを出すつもりだったが、今回の展示会は「109の土偶展」。その名の通り、展示全体で109体分の土偶作品を揃えるとのこと。

縄文土器一発

なるべく多くの作品を出展してほしい、との要望が主催者からあったため、過去作品、新作とも数を増やすことにした。

以下に、松本ジュンイチローの出展作品を簡単に紹介する。

洒ポーチ土偶

洒ポーチ土偶

遮光器土偶の形のお洒落ポーチ、略して洒ポーチ土偶。展示会場でも勘違いされていた方がいたが、お洒落の「洒(しゃ)」であり、「酒」ではない。

洒ポーチ土偶

胴体はレンズケース、頭はミニポーチ、手足はクリームケースで、収納力はあるようなないような。
初めて作成した土偶。色々と試行錯誤だったため、今見ると所々に粗さがある。

洒ポーチ土偶

おれの在廊中は試着して写真撮影ができるということにしたところ、主に女性の反応がよかった。
かわいい、ほしいという声をたくさん頂いた。
そのせいではないと思うが、妄想商品化道場の作品詳細ページの票がその後もじわじわ伸びている。
投票期間は終了しているのだが、嬉しい。

縄Phoneの女神

縄Phoneの女神

モチーフは、山形県で出土した国宝の土偶「縄文の女神」。iPhone5/SE用のケースなので「じょうフォン」の女神。
東京国立博物館の特設展で実物を見て感動し、衝動的にiPhoneケースにした。

縄Phoneの女神

独特の形で、何か特別な存在感のある土偶だ。おれが土偶を作り始めるきっかけになった本「はじめての土偶」の表紙になっているのもこの「縄文の女神」。
著者のこんだあきこさんは通称「土偶女子」。「はじめての土偶」は土偶の魅力をわかりやすく教えてくれる本だ。

縄Phoneの女神

実は今回出展したものは2代目。初代はそれこそ衝動的に作ったが、足の強度が足りずにもげてしまった。
2代目は足の芯に金具を使用して自立するように。その分重い。
頭には首にかけられるようにストラップをつけた。

縄文土器一発

縄文土器一発

2016年9月の「また、つまらぬ物を作ってしまった」イベントに向けて作った作品
「黒ひげ危機一発」を縄文土器と遮光器土偶に改造した。
正式名称は「黒髭土偶と一発型土器、および小型打製石器群」という設定。

縄文土器一発

イベント後、この作品の写真をTwitterにアップしたところ、バズって(拡散して)、結果縄文関係の色々な方に認知されるようになった。

またトゥギャッチや2ちゃんねるまとめ、台湾のオタク向け?ニュースサイトでも取り上げられた。
事前に掲載の連絡が来たトゥギャッチを除き、無断で記事にしているのだが。
でも台湾のサイトは独自に調べているし頑張って翻訳しているようなので好感が持てる。

展示では、おれの在廊中はプレイできるようにしていた。

ミニ四偶 “Banjo Doll”

ミニ四偶 “Banjo Doll”

ミニ四駆を土偶に改造した、その名もミニ四偶(ぐう)。
モチーフは青森県、三内丸山遺跡出土の大型板状(ばんじょう)土偶。

板状土偶

ベースにしたマシンが「ダンシングドール」、懐かしの「ダッシュ四駆郎」で主人公チームの紅一点である皇 輪子(すめらぎ りんこ)が使っていたミニ四駆の復刻版。

ダンシングドール

板状土偶+ダンシングドールで「バンジョードール」というわけである。
ボディ(車のデザイン部分をこう呼ぶ。車輪やモーターがついたベースの部分はシャーシ)に石塑粘土を盛って塗装し、土偶にしている。
パッケージもそれらしく作成した。

banjodollパッケージ

ミニ四駆、小学生のころはまっていたので懐かしい。
今はおれがはまっていたころとだいぶ事情が変わっているようだ。
シャーシが何種類もある。シャーシによって特性が違うらしい。
オプションパーツもその分増えている。モーターもたしか2種類くらいだったのが何種類もあってわからない。

ミニ四偶

きっとこの世界はハマるとやばい。沼だ。
あまり深入りせずにおこう、と思いつつも別のミニ四駆とパーツを何種類か買ってしまった。
今回のBanjo Dallも、走らせるわけじゃないのにシャーシとモーターをオプションパーツに差し替えている。
今回のものは、うっかり走らせて、もしクラッシュしたらバラバラに砕けそうなのだ。
いつかレースにも出られる土偶モチーフのミニ四駆を作りたい。

射光器土偶

射光器土偶

遮光器ならぬ射光器土偶。その名の通り光る土偶だ。
パナソニックの卓上LEDランプがベース。頭を押すと弱→強と2段階に光る。

射光器土偶

Amazonでこの商品を見つけて、土偶にしか見えなくなってしまった。
丸い頭に広がった体、君は土偶になるべきだ。

卓上LED

顔部分は半透明の樹脂粘土で光を透過するようにし、胴体は別の軽量樹脂粘土で。
西洋のアンティーク陶器のようなイメージで白っぽく塗装したのは、粘土の色に塗装するのに飽きたから、という理由もある。

射光器土偶

下部にスイッチがあり、上半身だけで懐中電灯として持ち歩くこともできる。

徳利形土偶と縄文酒器

徳利土偶

東京国立博物館で見た筒形土偶が、徳利の形にそっくりだったため、徳利にした。
縄文土器モチーフのおちょことセットで。頭は徳利の栓。

徳利土偶

縄文時代には果実酒を作っていた、という説がある。徳利やおちょこは使っていなかっただろうが。
どちらも可愛くできて満足している。

徳利土偶

100円ショップで買った徳利とおちょこに樹脂粘土を盛って塗装してあるため実用はできないが、「使ってみたい」との声をたくさん頂いた。
東博さん、ミュージアムグッズにどうでしょうか。

縄文ガールズネックレス

縄文ガールズ

縄文の女神、縄文のビーナス、遮光器土偶、ハート形土偶、仮面の女神、5体の土偶の顔をモチーフにしたネックレス。
土偶は基本的には女性を模しているので、ガールズ。
2016年夏のデザインフェスタで販売した「縄文ガールズブローチ」と同じ型を使っている。

縄文ガールズ

要するに5体分、土偶の数のかさ増しなのだが、ブローチをそのまま出しても芸がないということで、新たにネックレスにした。
半透明の樹脂粘土にアクリル絵の具を混ぜてひすい風のマーブル模様が出るようにしたものが、思いつきのわりにそれらしく見えるので気に入っている。

おれの在廊中は試着して撮影ができるようにしていた。
3人くらいしか試着しなかったが、反応は良かった。

109の土偶展

109の土偶展」は、土偶と縄文のポータルサイト「どぐぽた」の運営者たちが企画した、土偶がテーマの作品展。
2016年から制定された10/9の「土偶の日」に合わせて、10/8から10/16まで開催された。
会場は阿佐ヶ谷のギャラリー煌翔。

109の土偶展

「109の土偶展」の「109」は渋谷109ではなく、土偶の数である。
30名ほどの作家が参加し、計109体分の土偶作品が並ぶ。

学生時代に、所属していた美術サークルの展示会に参加して以来の展示会。12〜3年ぶりだろうか。
参加者用のグループサイトにアップされていた展示品リストでは、おれの作品だけ作品名が軒並みダジャレでちょっと恥ずかしかったが、実物を見るのが楽しみだった。

109の土偶展

同じ「土偶」というテーマでも、それぞれ解釈も素材も技法も異なり、実に個性的。
しかも109体分あるのでボリュームもたっぷり。
素焼きの土偶あり、木彫りあり、編み物あり、フィギュアあり、絵あり…… 大きさも様々。
小さなギャラリーが土偶で満たされる、不思議な空間であった。

109の土偶展

見るだけでも楽しかったし、おれはいつもインターネット上で作品を公開しているので、お客さんの顔が見えて、直接反応が見られるのはとても楽しかった。

プレイ中

在廊中「縄文土器一発」を何人かにプレイしてもらったが、皆さん楽しんでくれたようで、作った甲斐があった。
わかっていてもつい叫んでしまうのだ。
いやこれはおれが作った仕組みじゃなくてタカラトミーさんが作った仕組みだけど。改めて黒ひげ危機一発の凄さがわかった。

土偶マイム

白鳥兄弟さんの「土偶マイム」も面白かった。
土偶の形態模写なのだが、実際に見ると笑えるし、土偶の解説もしてくれるので勉強にもなる。
それに、土偶のパロディ作品を作っている身としては、オリジナルの土偶を紹介してくれるのはありがたかった。

仕事や個人的な都合もあり、限られた時間しか在廊出来なかったが、充実した1週間だった。
展示会参加の皆様、お疲れ様でした。
ご来場頂いた皆様、どうもありがとうございました。

こういった展示会には、今後も定期的に参加していきたい。
いずれは個展も……!

出展土偶

おれの出展土偶勢揃い。今回は物販はしなかったが、次は物販も検討したい。