2015年05月31日

銭湯マニアと行く京都銭湯めぐりの旅2015

銭湯マニアと行く京都銭湯めぐりの旅2015

昨年、友人の銭湯マニア・高山氏の誘いで、京都の銭湯めぐりに同行した。
京都の銭湯で開催された、銭湯を舞台にしたアートイベント「京都銭湯芸術祭」に合わせた旅程だ。
今年も「京都銭湯芸術祭」が開催されるとのことで、再び高山氏からお誘いがあり、京都へ行ってきた。

友人の高山洋介は、大の銭湯好き。
東京都内の銭湯に全て行くことを目標とし、銭湯レポートを区ごとに冊子にまとめた「東京銭湯」という同人誌を作り、ENGELERSというサークルとして発表しているほか、デイリーポータルZで銭湯マニアとして紹介されたり、高円寺のイベントで銭湯のペンキ絵師によるライブペインティングを企画したり、ニュースサイトで銭湯のレポート記事を連載していたこともある。

東京銭湯
同人誌「東京銭湯」。東京の銭湯をめぐってすでに10冊目。

今回の京都行きは、取材という名目ではあるが、高山氏の銭湯めぐりは基本的に趣味。高山氏、私ともに当然自腹である。

飛行機で関西方面へ

行きはそれぞれ別なので、私は格安航空会社でおなじみのジェットスターを利用。
成田空港の新しいターミナル、第3ターミナルから、関西国際空港へ向けて出発。

第三ターミナル

東京から京都までの費用は新幹線の約半額(約8,000円)。その代わりかかる時間は約2倍(約4時間)。忙しい人にはおすすめできないが、一度このルートも使ってみたかった。飛行機に乗るのも、空港で出発を待っている間のソワソワした感じも好きだから。

ジェットスター

大阪で一泊。ビジネスホテルに泊まるのも好きだ。最低限のものが一揃いあって、非日常感はあるけど便利という感覚。ちょっと未来っぽくもあるし。

大雨でスタートの銭湯めぐり

翌日京都へ。ちょうど台風が来ていて、天候はあいにくの雨。

京都は雨

ちょっとテンションが下がるが、おれのせいかもしれない。
実は最近、雨男疑惑が強くなってきたおれ。そういえば徳之島でもずっと雨だったし、台湾に行った時も台風が来たことが。

昼過ぎに高山氏と合流。予定ではこの日、3軒の銭湯をめぐる予定だったが、悪天のため2軒に変更。
雨男のおれは高山氏に従うのみである。
修学旅行生にあちこちで遭遇しつつ、銭湯まで歩く。
1グループごと?にタクシーを借りきって回る学校があるんだな。びっくり。

初日は以下の2軒へ。

玉の湯
玉の湯
薬湯(入浴剤入り)がトマトの湯で、しかも赤いライトで怪しい雰囲気だった。芸術祭のため壁に絵が描いてあり、作者も入りに来ていた。

玉の湯おしどりロッカー
下駄箱がおしどり。

錦湯
錦湯
木造で、入り口すぐ脱衣所というレトロでかっこいい作り。脱衣所でコンサートや寄席を時々やっているらしい。

2日目はようやく晴れて少し暑いくらい。

送り火
遠くに大文字山の送り火が。
「大文字焼き」って言うと京都の人に馬鹿にされるらしいですよ。

この日行った銭湯は以下の3軒。

東雲湯
東雲湯
浴室内がかなり変則的なレイアウト。白いケロリンの桶があり、これはレアだそうだ。汚れやすいので黄色に変更したそうで、一般的な黄色のケロリンより古いモデルとのこと。

東山湯温泉
東山湯温泉
ジョン・レノンが好きなんだろうか、ポスターがあったり脱衣所にビートルズが流れていたり。

平安湯
平安湯
鉱石風呂、トルネードジェットバス、薬湯、足つぼなど、色々な浴槽がある銭湯。

京都の夕方

3軒回るともう夕方、風呂あがりの空気が心地よい。ずっとこの気候だったらいいのに。

3日目は少し天気が不安定に。まずは以下の3軒へ。

新シ湯
新シ湯
しんしゆ、と読むらしい。ちょっとエヴァンゲリオンっぽい名前。営業開始少し前に行ったら開店待ちのおじいちゃんおばあちゃんがたくさんいた。

新シ湯開店待ち
新シ湯の開店を待つみなさん。大人気。

大黒湯
大黒湯
奥に長い浴室の銭湯。カランについているシャワーの形がなんだか不思議だった。

大黒湯おしどり錠
玉の湯とは違うタイプのおしどり錠。錠と鍵のペアだからおしどりなんだろうか。

旭湯
旭湯
青いタイル貼りの外観、のれん、ぶら下げてある看板がかっこいい。

旭湯アップ
「本日有ります」という表現は東京では見ない気がする。

これで「京都銭湯芸術祭」に参加している銭湯は全てめぐった。

若者が運営する銭湯、梅湯

3日目の最後に行ったのが、梅湯。

梅湯

ここは、湊さんという20代の若い男性が、廃業になるところだった銭湯を借りて継続させているところ。2015年5月5日にオープンしたそうだ。

湊さん
湊さん。高山氏とは銭湯好き仲間。

当日もボイラーの不具合で開店が遅れていた。
古い設備を使っているのでそういうこともあるらしい。

営業開始まで高山氏と2人でその辺を歩く。梅湯は高瀬川のそばにあり、付近を散歩するだけでも楽しい。野郎2人でなきゃもっと良かったかもしれないけども。

鐘
道に鐘が置いてあったりとか。

眼科外科歴史博物館

近くに眼科外科歴史博物館という建物があったので、覗いてみようとしたら、管理人らしきおばちゃんに話しかけられた。要約すると「ここはマニア向けだから、軽い気持ちで入ると退屈するかもしれないから入らないでくれ。でもマニアなら絶対喜ぶから入ってくれ」とのこと。入って欲しいのか欲しくないのかちょっと分からなかったが我々はその方面のマニアじゃないのでやめておいた。そこまで言われると逆にちょっと気になったけど、ほうきを逆さに立てられたら嫌だし。

カメラが壊れた

梅の湯へ戻る途中、高山氏のカメラが突然壊れた。液晶が全く映らなくなり、相当凹んでいた。理由は、帰ってからまた明日銭湯を撮影するから。本当に、どんだけ銭湯好きなんだ。

梅湯

梅の湯へ戻ると無事に営業を始めていた。
一部設備を入れ替え、内装を直し、ひと月ほどでリニューアルしたそうだ。
基本的に湊さんひとりで運営しているので、ずっと泊まりこみでなんとか維持しているという。
無事、地元の人達にも受け入れられてきたそうで、今後共頑張って続けてほしいものだ。

梅湯中

京都の銭湯はここが違う

京都の銭湯は、東京の銭湯とはちょっと違う。前回8軒、今回9軒めぐってみて気づいた点は以下のとおり。

牛乳石鹸ののれん

・牛乳石鹸ののれんが定番
牛乳石鹸ののれんをかけているところが多い。牛乳石鹸が大阪の会社だからだろうか。営業が回ってくるからかもしれないが、牛乳石鹸の可愛いデザインののれんの率が東京よりずっと高いようだ。
・見た目より広い印象
商店街や大きな通りに面したビルタイプの銭湯でも、見た目より広く、浴室に天窓があって天井が高く明るいところが多いように感じた。
・ロッカーに脱衣カゴ
脱衣ロッカーに服を直接入れないのが京都流。だいたい重ねて置いてある脱衣カゴを取り、そこに脱いだ服を入れてロッカーにしまう。
・洗面台の位置
浴室と脱衣場の間にタイル貼りなどで濡れても平気なつくりのスペースが有り、その脇に洗面台が据えられているのが京都流。
・小さい桶
東京で使われている桶より一回り小さいものを使っているところが多い。同じケロリンの桶でも一回り小さい。これは関西の銭湯では湯船からかけ湯する習慣があるからだそうだ。
・サウナが無料
東京の銭湯は、サウナが有料であるところがほとんどで、入浴料と合わせると7〜800円になり、ちょっと高いな、と思ってしまう。一方、京都の銭湯はサウナが無料のところが多い。
・浴室のレイアウトが自由
二重になっていて浴槽の中に浴槽があるデザインや、浴槽の中に噴水があったり、吐水口が女神像だったりと、浴室内のレイアウトが東京よりも自由であるように感じた。
・水風呂のライオン
水風呂の吐水口がライオンの形をしている確率が高く、現在のところ半数以上。これは施工業者の都合だろうか?

銭湯マニア・高山氏のここがスゴイ

普段はひとりで銭湯をめぐっている高山氏。昨年に続き今年も同行してみたが、さすが銭湯マニア、という点をいくつか発見した。

メモを取る高山氏

・計画的
行くと決まったら、各銭湯の立地や営業時間を元にすぐに計画を立ててくる。情熱と計画力がスゴイ。
・素早い
銭湯に入って服を脱いて風呂に入るまでが素早い。これも効率よく銭湯を回るためか。気づいたらもう湯船に入っているからスゴイ。
・観察している
浴室内で体や頭を洗う間、それとなくあたりを見回している。これは後でレイアウトや特徴をメモに残すためだ。銭湯から出るなり「ガリレオ(福山雅治の)」ばりにメモを取り始める。このメモを何に使うかというと、特に何かに使うわけではなく思い出に残すためだそうだからスゴイ。
・楽しむ
本来、1日に何軒も銭湯を回るのは好きではないという。それは1軒1軒を楽しめないから、とのこと。銭湯愛がスゴイ。
・家族の理解がある
高山氏、実は数カ月前に子供が生まれたばかり。何より夫を酔狂な旅に送り出してくれる奥さんがスゴイ。

何よりスゴイのは一番最後のやつだ。家に帰ってもひとりのおれとは違うのに。
この旅以外にも、ほぼ毎日どこかの銭湯に出かけていても奥さんは文句を言わないそうだ。もっとも彼の銭湯通いは独身時代からずっとなので、もうあきらめているのかもしれないが。
高山氏の銭湯マニアとしてのスゴさが改めて理解できた旅であった。
でも本人はあまり銭湯マニアとして知られたくはないそうだ。
ただ銭湯が好きだからやっているとのこと。

帰りは新幹線で東京へ。柿の葉寿司と押寿司のセットとビールを買って。この行程もまた楽しい。飛行機も好きだけど、新幹線はもっと好きだ。もう少し安くなってくれたらたくさん乗るのに。

柿の葉寿司

生活文化の違いは楽しい

京都といえば神社仏閣、そして古都。どれも非日常感があり、もちろん魅力的なのだけれど、京都の人たちが日常使っている銭湯も、やはりちょっとだけ非日常感がある。それを充分に味わえた旅だった。
今回行った以外にも京都には銭湯がたくさんあるので、皆様も是非、京都に行った際は銭湯に行ってみて欲しい。銭湯帰りに京都の街を歩くのも風情があって楽しそうだ。

御金神社

金の鳥居の御金神社で金運アップのお願いをしてきたので、近々5億円くらい転がり込むに違いない。

高山氏率いるサークルENGELERS、現在、銭湯検索アプリを開発中だそうだ。
2015年夏リリース予定とのこと。銭湯好き必携のアプリになりそう。
日本全国銭湯検索アプリ「いい湯なび」