2015年02月23日

本を作ってコミケに行こう

本を作ってコミケに行こう

2014年の夏に、友人である高山氏の手伝いでコミケに行ったのだが、自分の好きなものを形にして販売する、ということに羨ましさを感じた。それを本人に伝えたところ、君も何か作ればいい、という。

おれの好きなもの、何だろう…と考えて、やはり我が人生の羅針盤である、一番面白いサイト「デイリーポータルZ」しかないだろう、という結論に。
ということで、デイリーポータルZの1年間の記事からおすすめのものを紹介する本を作ることにした。

京都の銭湯めぐりにも一緒に行った、銭湯マニアの高山氏。
高山氏の銭湯マニアとしてのメインの活動は、東京都内の銭湯をすべて回り、本にまとめる、というもの。
そうして作った同人誌「東京銭湯」を、ENGELERSというサークル名で、年2回のコミックマーケットにて頒布(同人誌は販売って言わないらしい)している。
その活動がもとで、「デイリーポータルZ」に取材されたり、マイナビニュースに銭湯の記事を掲載したりと、銭湯マニアとして徐々に評価され始めている。
今回は、2014年12月末のコミックマーケット87にて、高山氏のサークル、ENGELERSのスペースで委託という形でおれの作る本を頒布してもらえることになった。
サークル名はこのブログから「ろまん研究所」。

と、決めた時点で10月末。2ヶ月あれば余裕だろう、とこの時は思っていた。

まずは1年間の記事をピックアップ

今回作る本の対象とするのは、デイリーポータルZの記事のうち、2013年1月から12月に公開されたもの。それらをピックアップしてリスト化する。月ごとのバックナンバーがあるのでそれほど難しくはない作業だ。
難しくはないが、半月ほどかけて全てピックアップしてみたら1150件以上。ラジオやまとめ記事を除いても1000本近い記事がある。これを全てチェックしなければならない。
合わせて1年間に記事を掲載していたライターさんのリストも作成。

作業中

内容の決定

ようやく全体のボリュームが見えたところで内容を決める。
内容は、
・もくじ:1/2P
・デイリーポータルZとは、楽しみ方:1/4P
・2013年概要:1/4P
・ライター別おすすめ記事:4P
・2013年のおすすめ記事:4P
・あの記事を真似する(2本):3・1/2P
・あとがき:1/4P
・奥付:1/4P
と決定。

ピックアップした記事のチェックとレビュー

おすすめ記事のリストを掲載するので、1000本近くの記事を流し読みし、簡単なレビューと評価をつけていく。過去に一度読んだとはいえ、ほぼ丸1ヶ月これに費やすことに。旅行に行ってもホテルでデイリーポータルZを読んでいた。

作業中

結局記事のレビューが終わったのが12月13日。コミケ当日は12月28日。印刷に1週間かけるとすると4日間ほどで完成させなければならない。
合わせて「あの記事を真似する」という、2013年の記事から2本ピックアップしてその企画を真似する、という記事を書くことにしたため、その時間も必要だ。

怒涛の記事作成

レビューと評価を元にライター別、月別のおすすめ記事をピックアップしたらデザインに当てはめていく。その過程で文字数なども調整。時間がないので同時進行である。

デザイン中

真似する記事は「水のゼリーが予想外にうまかった」「アクを取りまくるカレーVS取らないカレー」の2本に決定。
入稿予定日前々日に材料を集め、実験。結果については本に詳しく書いてあるのでそちらをご参照いただきたい(このブログでもそのうち書くかもしれない)。

実験

実験が終わったら記事を書く。全部その日のうちである。
書き終わったらデザインに流し込み、調整。
これでやっとひと通り完成だ。
細かな調整を行なって入稿。なんとか予定日に間に合った。

什器作り

今回、高山氏から頼まれていたことがもう一つ。
販売用の什器(飾る棚みたいなもの)を作って欲しい、という依頼だった。
高山氏のサークル「ENGELERS」はコミケ出場4回目。銭湯の同人誌「東京銭湯」もすでに10作目、今回は「東京銭湯」の新刊2冊、三重の銭湯すべてが掲載された「三重銭湯」、立ち食いそばのまとめ「蕎麦ノ路」新刊・既刊を効率よく並べるために専用の什器が欲しいとのことだ。

同人用語の基礎知識というサイトでスペースのサイズを確認。
なるほど、90cm×70cmか。これが実はおれの勘違いだったのだけれど。
実はコミケのスペースのサイズは90cm×45cm。一般的な長机より奥行きがだいぶ狭いのだ。
結局勘違いしたまま作成してしまい、当日になって、予定よりでかい!となった。

什器

パーツごとにばらして運び、現場で組み立てることができるように作ったのだが、今考えれば構造が複雑すぎた。

遂に本が届く

12/24、我がデイリーポータルZの同人誌、その名も「デイリーポータルZの傾向と対策2013」、遂に到着。
コミケまであと4日。世間ではクリスマスイブだが、幸いにしておれには一切関係ない。
自分で作ったとはいえ、精一杯やっただけに愛着は湧いてくる。何度も読み返してしまった。

本届く

コミケ当日

高山氏の家に前泊させてもらう。前回手伝いに行った時もそうだったが、ふたりとも深夜まで飲んでいてろくに寝ないまま会場へ。
什器がでかい、というトラブルこそあったものの、てきぱきとセッティングしていく高山氏。もう慣れたものである。おれは正直そんなにやることがない。

セッティング

10:30に拍手とともに開場。
コミケの販売スペースはかなり狭く、2人しか入れない。
もう一人、高山氏の友人が手伝いに来ていたので2人で1杯。
暇なので自分の本の宣伝ボードをぶら下げてウロウロしていた。
おそらく効果はなかっただろうけど。

宣伝ボード

ENGELERSのネームバリューか、ほぼ唯一のジャンルである銭湯本という利点か、途切れなくお客さんがやってくる。タイミングによっては人だかりができるほど。
我がデイリーポータルZ本もぽつぽつと手にとってくれ、購入いただける人も。

頒布中

ENGELERSの今回の新刊のうち「蕎麦ノ路」は早々と完売していた。やはり食べ物の本は需要があるのだろうか。

前回は15時過ぎに撤収していたが、今回は終了時間である16:00まで粘った。今回「東京銭湯」の売れ行きはまあまあだったそうだ。
我がろまん研究所の「デイリーポータルZの傾向と対策2013」の販売数は18部。正直な話、委託で他ジャンル、ほぼ宣伝なし、ということで、10部出れば上々だと思っていたので、満足である。
50部刷ってまだあと半分残ってるけど。

打ち上げでしこたま飲み、ふらふらになって帰宅した。

本を作るということ

Webデザイナーという仕事をしていると、制作物は基本的にデータであり、手元に残るものはない。
本を作るということは、形に残るということ。そしてそれをお客さんに売るということは、反応が見えるということ。

本中身

新鮮な体験でとても楽しかったし、一度やってみたことで自信がついたと同時に見えてきた反省点。
次回、2015年夏のコミケに、もしENGELERSがまた受かったら、おれもまた本を作りたい。テーマはもちろんデイリーポータルZだ。

今回「デイリーポータルZの傾向と対策2013」をお手に取っていただいた皆さん、購入していただいた皆さん、どうもありがとうございました。
機会があれば、また夏に!
もちろん今回のも持って行く予定です。

デイリーチーム

後日、デイリーポータルZのスペースに行って献本してきました。