2015年12月02日

山の神の作り方

山の神の作り方

山の奥深くに住む、千年以上生きた巨大な蝸牛(かたつむり)は、山の神となるという。
人前に姿を現すことはめったにないが、遭遇したものには莫大な財産を与えるとも、欲深いものを山の中に閉じ込めるともいわれている。

そんなイメージの山の神を作成して、造形コンテストに応募した。

ラーメンズ片桐仁さんのコンテストで賞を頂いて以来、造形に興味が湧いたので、何か力試しというか、目標設定のために造形のコンテストを探していた。
インターネットで検索して見つけたのが「全国妖怪造形コンテスト」。
民俗学の父と呼ばれた柳田国男の出生地である兵庫県神崎郡福崎町が主催する、妖怪の造形コンテストだ。

妖怪は興味のある面白いテーマだし、タイミングもちょうどよかったので、応募してみることに決めた。
募集テーマは「小豆洗い」「山の神」「雪女」の3種類。
小豆洗いや雪女はある程度固定されたイメージがあるが、山の神は自由度が高そうなので、今回は山の神を作ってみることにした。

山の神ってどんな姿だろう

山の神とはどんな姿をしているだろうか。
人間の姿というより、山に住む動物の姿をしているイメージがある。
蛇や熊もいいが、もっと山そのもののイメージを表すような動物がいい。

かたつむりはどうだろうか。背中に岩山を背負い、ゆっくりと移動するかたつむり。
それ自体に感情はなく、人間に恵みを与えることも、被害をもたらすこともある。そんな山の神。かたつむりがぴったりだ。
モチーフはかたつむりに決定。

なお、柳田国男の著作に、かたつむりの呼び名を調査した「蝸牛考」というものがあることはあとで気がついた。

動く機構を仕込みたい

以前買った、タミヤのはずみ車動力車作成キット。
モーターではなくはずみ車、遠心力を利用して動く車のキットだ。

はずみ車
これを仕込んで、動く山の神にしたい。
まずはこのキットの組み立てから始める。

はずみ車パーツ
おお、部品が多い。意外と大ごとだこれは。
30分くらいで簡単に組み立てられるものだと思っていたので、開けてみて面食らう。

とはいえ時間はかかったものの、特に苦労はなくはずみ車動力車は完成。
これにかぶせる形で山の神を作る。

はずみ車動力車完成

厚紙と紙粘土とスタイロフォームで原型作り

厚紙ではずみ車にかぶせるベースを作り、そこに紙粘土とスタイロフォーム(発泡スチロールより少し硬い樹脂の板)を貼りつけて大まかな形を作る。

土台

殻と尻尾と胴体はそれぞれ別々に作成してあとで針金でつなぐことにした。
中に動力を仕込む都合で当初の想像より大きいものに。
頭と尻尾はほぼ単純な形なので、殻を先に仕上げていく。

殻を岩山にする

原型に、モデリングペースト(乾くと固まるペースト状の樹脂)で凹凸を作り、ジオラマ用の小石や100円ショップで買った石のブレスレットをバラしたものを埋め込んだり、ナイフで亀裂を入れたりして岩山のベースとした。

殻塗装前
殻の上に木を生やしたかったので、針金をねじって粘土で覆った木を接着。岩の表面に針金の根を這わせる形に。
岩山をグレーに、木を茶色に下塗りすると、なかなかそれらしく見えてきたのでは。

殻下塗り

更に色味の違うグレーで岩の陰影を作ったら、ジオラマ的なアプローチでディテールを作っていく。
絵の具と木工用ボンドを混ぜたとの粉(木工用の目止め剤)を置いて土の風合いを出し、ジオラマ用の繊維を貼りつけて枯れ草に。その上にジオラマ用の草や苔を貼り付けていく。

殻仕上げ後

木の葉や茂みはジオラマ用のスポンジを貼りつけて作成。仕上げとして、部分的に金で塗装。金の鉱石が埋まっているイメージだ。

殻仕上げ後2

頭と胴体と足の作成

頭は、白化した枯れ木のようなイメージで。
平たく伸ばした石塑粘土に、ヘラで木の模様をつけて乾燥させ、砕いて木片のようにしたものを貼りつけた。目のことを忘れていて片方しかスペースが無くなってしまったが、この際片目でいいとして、半球形のビーズを貼りつけて目に。

頭塗装前

頭の周りの触手は針金で作成。
塗装で質感を出したら頭の完成である。

胴体と足の塗装は、当初実際の蝸牛のように茶色みがかかった色にしたところ、妙に生々しく、要は気持ち悪い感じになったためやり直し。神々しさを出すためにギンリョウソウ(腐生植物)の色をイメージして、青紫で塗った上に少し銀色を混ぜた白を塗って下の色が透けるようにした。

山の神塗装後

塗料の固定のためのラッカーを全体に塗布したら、山の神の完成だ。

公園で撮影

撮影は、山の神に偶然遭遇した人間(ジオラマ用のモデルに塗装したもの)というイメージで、近くの公園にて行なった。

山の神

こういった撮影は初めてで、背景にものが入らないようにしたり、ピントをどこに合わせるか迷ったりと苦戦したが、どうにか撮影を終えて締め切り当日に応募できた。

山の神

山の神

コンテスト結果

妖怪造形コンテストの結果はというと、入賞ならず。
入賞作品を見ると、造形力のレベルがおれとは段違いだ。
力が及ばないどころではない。

そもそも力試しで、入賞できるとは思っていなかったが、まだまだ自分の想像したものを形にするための造形力が足りないことが分かった。
しかし、どうやって想像を形にするのか考え、作り上げていく作業は楽しかったので、またこういったものも(普段のネタ工作だけではなく)作っていきたい。
あと撮影技術ももう少しなんとかしたいものだ。

山の神は動かない

そうそう、作る工程でゆがんでしまったのと重さで、結局はずみ車キットをセットしても動きませんでした。