2015年09月26日
アップル御禁制の時代
10年以上前に新卒社員として採用された会社では、PowerMac G3を使っていた。ブルーのスケルトン仕様のやつだ。
それ以来、自宅のパソコンもMacを使うようになった。eMacを経て現在はiMacを使っている。
ノートパソコンはMacbook airだし、電話はiPhone 5。音楽を聞くのにはiPod nano。iPad miniも持っている。
Macはアップル社製のパーソナルコンピューター。ピンと来ない人は「Windowsじゃない方のパソコン」と考えてもらえば良い。
Macを使う主な理由は仕事(Webデザイン等)で使うのにすっかり慣れ、使いやすいと感じるからだ。アップル社にそこまで思い入れがあるわけではない。
「アップル信者」という人たち
世の中には、アップル社の大ファンという人がいる。
アップル社から何か発表がある度に夜更かしをしたり(アメリカの会社なので発表はだいたい深夜だ)、新製品が出る度に予約して一番に入手したり、更に使ってみてその素晴らしさをブログに書いたり、更には製品への愛情が昂ぶるあまりブログの記事がポエムのようになったり。
そういうコアなアップルファンは「アップル信者」と揶揄されることも。
あくまで、おれがアップル社の製品を使う理由は使いやすいからだ。
アップル信者というわけではない。
そう言ったおれに、男が差し出したのは一枚の古びた金属板。
真鍮製らしく、表面の摩耗した部分が金色に輝いていた。
そこに彫られていたのは、ひとりの人物。
摩耗して細かい描写は見えなくなっているものの、ハイネックにジーンズ、坊主頭に髭、丸眼鏡に不敵な笑みを浮かべたその人物を、見間違えるわけはなかった。
アップル社の創業者であり伝説的な元CEO、スティーブ・ジョブズの姿であった。右手には四角いものを持っている。iPhone発表時の姿だろうか。
男はおれに、これを踏んでみせろという。
これは踏み絵だったのだ。表面が摩耗しているのは、沢山の人間に踏まれたからだったのか。
おれはアップル信者ではない。
だから、ジョブズの姿を踏むことも、どうということもない。
だが、なぜか足が動かない。
落ち着くんだ。これは形だけのことだ。
形式的に、アップル信者でないことを示すために踏んで見せれば良い。
簡単な話だ。深く考えることはない。
しかし、足は動かない。
今まで自覚していなかった、おれの心のどこか一部分が、その人を足蹴にすることを拒んでいる。
そうか、おれはアップル信者だったのだ…
このように、アップル信者か否かを判定する機能を持ったガジェットが、i踏み絵です。
iPad miniのケースを兼ねたこの小さなガジェットを、疑わしい人に踏ませることで、あなたの周りの隠れアップル信者を簡単に見つけ出すことができます。
この、アップル御禁制の時代に。
i踏み絵なら、安心です。
現代的な踏み絵を作りたかった
江戸時代に幕府はキリスト教の信仰を禁止した。それでも隠れてキリスト教を信仰する、いわゆる隠れキリシタンを発見するために使ったのが踏み絵だ。
現代に踏み絵があったら、そこには何が描かれているだろうか。
価値観の多様化した現代、宗教を除けばそこまで信奉されているものがあるか、と考えていた時に、アップル社の新製品の発表を聞いた。
そうだ、世の中にはアップル信者といわれる人達がいる。
スティーブ・ジョブズの踏み絵があったら、彼らは踏めるのだろうか。
そう思ったので作ってみた。
iPad miniにマスキングをし、粘土を盛る。
平らにした上に、ネットで画像検索したスティーブ・ジョブズをモデルに、粘土でその姿を作る。
似ていないとしたらおれの腕のせいだ。
表面を紙やすりで削って、踏まれて摩耗した雰囲気を出したら、塗装。
一度、錆びて緑青が浮いたようにしようと青系で塗装したが、現役で使っているという設定にしたほうがいいと、茶色系で塗り直し。
光らせる部分に金色を入れ、乾燥させたら防水ニスで仕上げ。つやなしとつやありを部分によって使い分けた。
完成したi踏み絵の動画はこちら。
i踏み絵動画(BGMあり)
なお、実際に踏まれたら困る。
粘土製なので体重をかけると砕けるし、何より裏側にあるおれの大事なiPad miniが割れたら大変だ。
それに、自分で作っておいてなんだが、誰であれ人物が描いてあるものを踏むのは、意外と抵抗があるものだ。ものすごく失礼な気がするし。
飾っておくと、むしろスティーブ・ジョブズの大ファンみたいだ。
アップル御禁制の時代じゃなくてよかった。