2015年05月28日
アマゾンが来た!
ある日、玄関のチャイムが鳴った。
玄関のドアを開けると、いつも来てくれるクロネコヤマトの人だ。
「お届け物です」
いつもの見慣れた箱。
そうか。何か注文したんだっけ?
開けてみると、納品書が入っていて、ビニールに包まれている、これは…
ビニールから出してみると、間違いない。
アマゾンだ。アマゾンが来た!
アマゾンの箱の中のアマゾン
熱帯の植物が生い茂るアマゾン川のほとり。
配達に来たヤマトの配達員。
木や葉で作ったシェルターの住人は不在のようだが、不在票を置いていくのだろうか。
不在票を置いていったとして、はたして再配達するのだろうか。
そもそも住所とかあるのか。
ジオラマを作りたかった
ジオラマ作りに興味を持ったのは、デイリーポータルZで工作ライター・乙幡啓子さんの記事「小さなジオラマで壮大な神話を表現する」を読んだから。しかし敷居が高そうだな…と思って手を出せずにいた。
やってみたい気持ちが再燃したのは当ブログで「バレンタインにスイーツ枯山水」という記事を書いたとき。小さな世界を組み立てるのは思いの外楽しく、ジオラマなんて本格的にやったら楽しいに決まってる、ぜひやりたい、と思うようになった。
とはいえ何から始めたらいいのかわからない。先の乙幡さんの記事によると、巣鴨にジオラマの専門店があるらしい。どんなものかとりあえず覗いてみるか…と、巣鴨の「さかつうギャラリー」さんへ。
たくさんのジオラマ用品を眺めながらほうほう、こんなものもあるのか…と思っていると、店員さんに話しかけられた。苦手なシチュエーションである。無駄に汗をかくやつだ。
「どんなものをお探しなんですか?」
「いや、知り合いがやっていて(というか乙幡さんのことだけど)、面白そうだなと思ったので、どんなものがあるのかなーと思いまして」
「その知り合いの方はどんなものを?」
「(それ聞くか〜)えーと、西洋の歴史???みたいな感じですかね〜」
なんてごまかしたが、歴史じゃない、神話だ。
とりあえずどんなものがあるのかの研究のためムック本を買い、お店を出る。
読んでみると、ジオラマ作りには決まった作り方というのはなく、自由らしい。重要なのはモチーフ選びなのだろう。
モチーフを何にするか。
小さい世界。箱に入るくらいの。箱といえば、よくネットで買物をするのでアマゾンの段ボール箱がたくさんある。アマゾンの箱の中にアマゾンがあったらどうだろう。
ということでアマゾン熱帯雨林をモチーフにすることに決定。
まずは実地取材
夢の島熱帯植物館で熱帯の植物を見て、
国立科学博物館でちょうど開催中だった「大アマゾン展」を見て、アマゾン熱帯雨林の雰囲気を学んだら、いよいよ製作開始。
東急ハンズで道具を、さかつうギャラリーさんで色々意見を伺いつつ(アマゾンの段ボールの中にアマゾンを作ることは黙っていた)、材料を揃えてきた。
初めてのジオラマ作り
まず、手順がわからないので、完全に手探りで進めていく。
さかつうさんで買ったムックには、作例もたくさん掲載されていて、おおまかな作成手順は書いてあるが、誰も熱帯雨林は作っていなかった。
とりあえず全体のスケッチを描いて、どんな風に作るかを決める。
今見ると実に雑なスケッチである。
アマゾンのダンボールに収まる大きさにカットしたスチレンボードに、陸となるスタイロフォームを貼り付けて削る。スタイロフォームも初めて扱ったので、大量の粉が出て慌てふためく。
スタイロフォームに紙粘土とモデリングペースト(乾くと固まる樹脂)で陸の形を成形。更に削って形を整える。
その上にとの粉(木工用の目止め剤)を塗って土にする。粉を水で溶くのだがこの分量もわからない。適当にやったら乾燥させた時にひび割れが。
再度との粉を塗ってひび割れを直したあと、地面がリアルになるように黒のアクリル絵の具などで汚しを入れる。ウェザリングというやつだ。
これも加減がわからず、何度かやっているうちにどうにかそれらしくなった。
ってあっさり書いたがこれだけで5日くらいは費やしている。何しろいちいち乾燥させないと次の行程へ行けないのだ。
地面のベースが出来たので植物を作る。何しろ熱帯雨林だからたくさん木が必要になるはずだ。
針金、紙粘土、モデリングペーストで木のベースを作り、アクリル絵の具で塗装。これもウェザリングでそれらしくなった。感動的だ。
葉っぱ地獄
木の幹はうまくできたが問題は葉っぱ。
葉っぱは市販のものもある。レーザーカッターで切り抜いてあり、塗装するといかにもリアルな葉っぱになるのだが、いかんせんそれなりの値段だ。
市販のもの。細かい。
全て市販のものにするととんでもない金額になりそうなので、一部を除いて自作することにした。
これが後に伝わる、葉っぱ地獄である。
いや伝わってはいないが、葉っぱを1枚1枚切り抜いて塗装、という果てしない作業はまさに地獄。楽しいは楽しいのだがとにかく終わりが見えない。切り抜いて塗装したら、さらにそれを幹に貼り付けなければならない。締め切りがなくて良かった。締め切りがあったら途中で妥協していたと思う。いや、妥協した部分もあるのだけれど。
本当はもっとたくさん木を生やしたほうがリアルになったはずなのだ。でも、これ以上の地獄は無理でした。
10日あまりかかって葉っぱ地獄を抜けたらいよいよ組み立てていく。
先に大きな木を植えてしまったのだが、これが失敗だった。
小さな草を生やしたり、落ち葉を積もらせたりといった細かい作業の際、先に植えた木が邪魔になるのだ。これは今後の反省点としなければ。
ジオラマ用の草というものが売っているが、一種類だけだと単調なので一部自作。
100円ショップで買ってきたほうきを緑で塗装し、草にした。
アマゾン川の水の表現にはグロスポリマーメディウムを使用。乾くと透明感とツヤが出て、水に見えるように。
木工用ボンドを塗ったところにジオラマ用の緑のパウダーをまいて苔を生やしたら、続いて人物作り。
ヤマトの配達の人を作りたかったのだ。アマゾンの中のアマゾンにアマゾンを届けに来る人が。
人はタミヤの兵士のプラモデルを使用した。何人かのパーツを合わせてちょうどいいポーズに。パテでつないで塗装したら小さいヤマトの人の出来上がり。小道具としてアマゾンの段ボールも用意した。
湿度の高さを表すために全体に透明のラッカースプレーを塗布し、小さいヤマトの人を接着したら完成だ。
あとはビニールをかけてアマゾンの段ボール箱に入れればいいのだが、ラップで包もうとしたらサイズが足りない。旭●成め!(やつあたり)
100円ショップでビニール袋を買ってきて、切り開いて使用。
それでも包みきれてないので、写真ではなんとなくごまかしている。
ジオラマは楽しい、でも無限に時間がかかる
完成まで20日あまりかかった。
熱帯雨林にしては木が少ないという不満はあるが、無限に時間を使ってしまうので、この辺りで完成とした。
ずぶずぶと深くはまってしまう趣味のことを沼なんて呼ぶが、これはまさに沼。相当深い沼だ。
でもその分楽しくてしょうがない。リアルにするにはこうしたらいいんじゃないか、と考えて、実際にやってみてうまくいったときの快感は素晴らしいものだ。うまくいかなかった時は落ち込むが、比較的やり直しが効く。その分同じ所にこだわってしまうとどんどん時間を使ってしまう。
でもジオラマ作りは本当に楽しいので、もうすでに次は何を作ろうかな、とつい考えてしまう。
もちろん今度は森以外にするが。葉っぱ地獄はもうごめんだ。